妻の好きなところ
(一応これも書いておこう... 笑)
大学時代、俺が始めたバンドサークルに妻は女1人で乗り込んできた。部室代わりにしていた俺の安アパートにも平気で出入りし、男4~5人に混じって朝までバカ話に打ち興じていた。その大胆さ、屈託のなさこそ、当時俺が求めていた理想の女性像。男女の別なく本音で語り合える仲間として、俺は妻を大歓迎した。
当時はバブルだったが、高価な服やブランド物とは無縁の女。そもそも女を感じさせない着こなしが見事だった(笑)。父親が死んだばかりで家は貧乏。バイトと奨学金で学生生活を送っていた。根がボンボンな俺の目には、滅茶苦茶カッコいい苦労人に映った。
好き嫌いもはっきりしていた。好きなものはバンドの「たま」。そういう「変なもの」を愛するところもカッコいいと思った。自分の好きなものに対するプライドが半端じゃない。
あるチェーン系喫茶店のバイトの説明会。若くてやり手のイケイケ店長が「やる気のないヤツは今すぐ出て行ってくれ!」と檄を飛ばしたら、本当に出てきてしまった妻(笑)。俺だったら、自分には向いてないと思いながらも、とりあえず限界まで頑張ってしまうところだ。
人と違うことをする度胸、開き直り。建前でなく本質を見抜く目。「どこが悪いの?」という、あっけらかんとした生き様が輝いていた。
ところが今は...
俺が好きだったあの豪快さはまるで発揮されていない。
妻が恐れているもの ― 放射能、中国野菜、食品添加物、アメリカ牛、鳥インフルエンザ、生卵(サルモネラ菌)、自転車の3人乗り、いじめ、恥をかくこと...
俺が「あの頃のお前は...」的なことを言うと、妻は「う~ん、あの頃はヤケクソでね~」と笑う。あの快活さは、大学生活に馴染めず、不幸のどん底気分だった故の蛮行(英断?)だったと。
本来の妻は、例えば小学生のとき、ドッヂボールではいつも逃げてばかりいたらしい。逃げて逃げて、いつも最後の1人に残っていたので、得意だったとも言えるのだが、本人は怖くて怖くてドッヂボールは大嫌いだったと言う。
「人生とは逃げること、逃げ切ること!」。そんな人生観が伝わってくる微笑ましいエピソードだ(笑)。
きっと今は幸せなのだろう。守るべきものがたくさんある。それはいいことだ。
きっといざという時、本当に窮地に追い込まれた時、妻はまた、底知れぬ力を発揮するに違いない。
でもまあ、妻の肝っ玉が全開になるような大ピンチには、出来れば陥りたくないよな(笑)。
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